“tantapesa!!” aru様の素敵イラストはこちら→カノミロbaseball!!

 多くの血が流れた聖戦が終結し、世界に平和が訪れた。終わってみたはいいが、それまでの涙なくして語れない戦いの経過を丸ごと無視するご都合設定、元い、神々のペテンのような奇跡により、うっかり全員、聖闘士も、冥闘士も、海闘士も、つまりは断罪の衝撃を刻み込んだアイツも、感動的なシーンの割にどこかSMプレイに見えなくもないたぶんMなアイツも、別名・冥界ストーカー、Sと見せかけて女上司とのやり取りを見てると実はMなんじゃないかと疑いたくもなるアイツも、みーんな一堂に蘇ったわけで、多くの血は流された割に血の気の多さは相変わらずな登場人物全員、顔を合わせれば一触即発になりかねん状況に、底知れぬ不安を抱いた女神とパンドラ様の一声で、三界交流野球大会(巻き込まれ海界)が催されることになったのでした。
 まあ、そういうわけ。

ミロ「おい、なんだ。この格好は」
カミュ「ユニフォーム、と言うらしいぞ」
バラン「“やきゅう”をする際に纏う神聖な衣服だと、女神が言っておられた」
リア「つまりは、聖闘士にとっての聖衣のようなものだな」
シャカ「どうして私がこんな格好をしなくてはならないのかね?」
デス「さりげなく、自分だけよけたな」
リア「それは“やきゅう”をするためだろう」
ムウ「馬鹿ですか。そんなことは分かっています」
デス「シュラ、おまえの右手より切れ味良いんじゃねえか」
シュラ「あれと比べてくれるな」
ムウ「私が言いたいのは、なんで88人もいる中で、揃いも揃って黄金聖闘士が集まっているんですか。もっと年齢的にもビジュアル的にも適した人たちがいるじゃありませんか」
デス「なんたって暇だからな」
アフロ「女神の趣味も入っているのだろうね」
バラン「以上がスタメンで、監督サガ、コーチアイオロス。補欠カノン、応援シオン様と老師という布陣だ」
デス「おい、誰に向かっていってんだよ。いやに説明調のその台詞はよ」

ラダ「試合う前から仲間割れとは、女神軍もたかが知れているな」
シュラ「なんだこのどこからともなくきこえてくるふてきなこえは」
デス「棒読みやめれ」
一同「き、貴様は……!」(※効果音&二段コマ抜き)
ムウ「ああ、あの人だけは、絶対許すまじと思っていたんですよ。……でもここは神聖なスポーツの場、借りは試合で返すことに、」
リア「ライトニングボルトーーーー!!!」
ムウ「……言っているそばからなんなんですかね。あの人は」
シュラ「今さら言っても無駄だろう」
ミロ「フッ、やめておけ。アイオリア」
リア「ミロ!」
ミロ「ここで俺たちが争ってどうする。女神の顔に泥を塗るわけにはいかん。あいにくここにはハーデスの結界は効いておらん。あの時のようにはいかんぞ」
ラダ「ん? 誰だったか、お前は」
 ※どこかで亀裂が入る音がしました
ラダ「そんなことより、カノンはどこだ?」
 ※亀裂が入ったのはたぶん空気です。凍りついた
ムウ「彼は常時補欠と相場が決まっているんです」
ラダ「奴が補欠だと? 馬鹿な」
ムウ「冥界編では、大量途中退場が出たから、出番が回ってきたようなものですよ」
カノン「さすがにそれは、俺に失礼じゃないか」
ラダ「ふ、カノン」
カノン「む、お前はラダマンティス」
 ※見開き大ゴマぶち抜き、北斎よろしく白波のバックをご想像ください
ラダ「お前ほどの男が補欠に甘んずるとは……」
カノン「フッ、俺の役目は終わったのだ。だが、お前が望むとあらば、試合が終わった後に好きなだけ相手をしてやるぞ、ラダマンティス」
ラダ「では後程二人きりでゆっくり決着をつけることとしよう」
ミロ「スカーレット二ーードル!!!」
デス「カノン、お前が出ていくと話がややこしくなるからやめておけよ」

謎の声「シードラゴン!」
リア「だれだ!?」
デス「まあた、厄介なのがきたんじゃねぇの」
カノン「海魔女のソレント!!」
ソレ「着ているものが違うようですね。あなたはこちらのはずですよ!」
ムウ「なんです、その紺地に白で、胸に大きく書かれた文字は」
デス「だからよ、さっきからちょいちょいはさまれるその説明台詞はだな、って、もういいか」
ソレ「そうです。これこそが、漢の証の『海人(UMINCHU)』Tシャツ!!」
アフロ「理由以前の問題で着たくないね。私の美意識に反する」
ソレ「むぅ、ジュリアン様ご自身が筆をとったデザインを愚弄するとは、海産物に属する分際で。海界チームユニフォームにケチをつけるなど、死をもって贖うがいい……!」
カノン「やめておけ。国も著作権的にも色々間違っているが、まあそれもいい」
シュラ「いいのか?」
デス「……もう、いい。触れたら負けだ」
カノン「俺は女神の聖闘士として赦されここにいる。今纏っているこのユニフォームは、いわば俺の聖闘士としての証、いかなることがあろうとも脱ぐわけにはいかん」
ソレ「あなたにそれを言う資格があるのか」
カノン「なんだと?」
ソレ「確かにあなたは数ページに渡るちょっと感動的なエピソードで贖罪を果たした気でいるかもしれません。しかし! あなたの身勝手な行いのせいで、大迷惑を被ったのは、我ら海人も同じこと!」
カノン「ぐっ、それは……!」
ソレ「シードラゴン、今こそ、海界への贖罪を果たす時です!」
アフロ「そんなことで許してもらえるんならいいんじゃないの?」
デス「あー、つーか、あれか。メンバー足りないっていう」
ソレ「黙りなさい。海産物ズ。だいたい野球という時点で私たちにケンカ売ってるとしか思えないでしょう。名前のついている海闘士全員どころか、ジュリアン様とテティスも強制参加なのですよ」
カノン「カーサが何役か演じればどうにかなるだろう」
ソレ「ぱっと見よさそうでも、納得しませんよ! いくら二役以上やっても、分裂するわけじゃないんですから。守備の時に穴ができるでしょう」
デス「わりかし冷静じゃねえか」
ソレ「だいたい、聖域にいるかぎり生まれながらに補欠の代名詞みたいな役割しか与えられないんですから、海界に来た方がよっぽど有意義な人生を送れます。腹をくくって海底に骨を埋めさない」
シュラ「ツンだかデレだかよく分からん誘い方だな」
デス「だからそういうのをツンデレというんじゃないのか?」
サガ「馬鹿な! 私は今まで、この愚弟のことを補欠だとか、スペアだとか、2番目だとか、レプリカだとか」
デス「うわっ、今まで黙ってたかと思えば、鬱陶しい登場の仕方を」
アフロ「潔いくらいほめている要素がないねえ」
サガ「可愛い弟を海底で慰み者にさせるくらいなら、いっそこの兄の手で……」
カノン「早まるな、サガ! スニオン監禁の時となんら進歩がないぞその発想は!!」
サガ「ギャラクシアン……」
デス「げ、きいてねえ」
ミロ「スカーレットニーードル(ようやく9発目)!!!」
シュラ「そっちもまだ続いていたか」
デス「だから、時間かかりすぎだっつーんだその必殺技は!」

 いいかげんにしなさい、と女神の怒声が響くのに、もう数分もかからなかった。
 こうして交流野球大会は、プレイボールの前に中止となった。もちろん第2回が開催されることはなかったという。

 唐突に、幕。

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Open 2012.5.28 / Renewal 2015.11.22
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