後編 猫を風呂に入れるまで ★


「…、…く…………」
「ミロ、力を抜け」
「無理を、言うな……!」
「いいから抜け。余分な力を入れているから辛いんだ」
「他人事だと、思って」
「今は何もしていない。いいというまで動かさないから、言うとおりにしろ」
「う、……」
「息を吐け」
「…っ…………ふ……」
「ゆっくりだ」
「………………」
「そうだ。大丈夫だろう? ……いいか、動かすぞ」
「? …………なっ!?」
「動くな。そのまま力を抜いていろ」
「おま、」
「抵抗するな。ゆっくり息をするんだ」
「……く………………ッ…………」
「息を止めるな。大丈夫だ」
「……ん…………」
「そうだ、任せておけ」
「…ぅ、…………ぁ……」
「ああ」
「……ぁ…………、…………んぁ!? ちょっと、待、てッ……!」
「いいから」
「良くない! そんなところ……く、一緒にはやめろ!!」
「少しは気持ち良くならんとこの先が辛いだろう」
「いらん世話だ! とにかく、う、ああ、くそっ!! もうよせ!」
「暴れるな、まったく。大人しくしろ」
「よせというにッ! だいたいなんでわざわざ、ここまでして……!」
「……すまんな。お前に無理を強いているのは分かっている。辛いならやめても構わん」
「……誰が、やめると言った」
「負けず嫌いは損をするぞ」
「う……」
「俺のためか? 嬉しいな」
「ッ……自惚れるな」
「ならお前が好きでやっているとでも言う気か? いくらおめでたい頭でも、そういう勘違いは出来そうにないな」
「……分からん」
「なに?」
「これがどういうことだとか、お前が何だとか……。が、分かろうと努力はしている。その一環だ。協力しないとは言わせないぞ」
「お前は……本当に……、それは俺を喜ばせているようなものだぞ」
「だから勘違いをするな。努力はすると言っているだけだ。どんな答えが出るかは分からん」
「その答えで十分だ」
「……」
「いいんだな? 続けて」
「……続けろ」
「……」
「……う、く、」
「我慢しなくていい。また力が入っている。大丈夫だ」
「……はッ………………っ……」
「お前の嫌なことはしない。だから少しは身を任せてくれ」
「あぁっ…………んんぁ…………く、そ……」
「ミロ」
「み、みもとでしゃべるな! ……ああ、くそ! もう離せ!!」
「言っているそばからお前は、」
「耳はよせと言ってる! どけっ!!」
「抵抗するな。蹴るな」
「…ぅ、く………も。う、やめろっ……!」
「……爪を立てるな。声も、堪えなくていい」
「ぐ………、ん…ぁ……、」
「どうせ誰も聞いていない」
「…うあ、アアァ、…い、い気になるな、あ、」
「力を抜けと、言ってるだろう」
「い、やだ。く、そっ……」
「ミロ、言うことを聞け」
「っ……お前にだって、見られるのはい、やだ……!」
「……。分かった」
「な、にをっ……? ……」
「こうすれば俺からは見えない」
「……」
「手は塞がっているからな……。聞いたことは忘れてやる。それで許せ」
「……」
「無理に逆らおうとするから、余計に感じるんだぞ? そのまま受け入れれば楽になる」
「……」
「大丈夫だ。俺に任せろ」
「……………………、 、……」
「……」
「…………………………く…………。……ぁ…………、……は、…………、」
「ミロ」
「……ア、ん…………、……ぅ………、…うっ、…く…ア………ぅあ、………あぁ、あっ、」
「ミロ」
「あ………………」
「そのまま力を抜いていろ。入れるぞ」
「ん、………………ッ!!!」
「!! み、ろ。くっ……おまえっ…」
「ぅぁあ、入って、来るなあッ!」
「ミロ、落ち着け! 力を、入れるな……!!」
「う、くあ……」
「落ち着け!!」
「は、っく、……あ、ぐ、」
「おま、え。そんなに締め付けたら、俺の、我慢、が続かんだろうが」
「っ……、うるさいっ! さっさと、いってしまえ!!」
「ミロ…ッ……!」
「ううっ、ああああ、黙れえぇぇ…!!」
「くっ、もう、動く、ぞ…ッ………!」
「あああッ……!! やめ、ア、さ、わるなああ……! ぁあ。ッ……ハッ。っあ、だめだ、……! っ、か、のん……ぁ、っ、……う、はぁ、…ぁ、ぁ、あっぁぁっ…………」
「……く」
「……は。あ、ああっ! もう、やめろ……! アッ、んぅ、……うあぁ! やめ、も、あぁっぁぁ……、ほんとに、だめ、だっ…あぁ……、カノンッ……! カノン!! ああ、あああああ…ぁぁ……ッ、あ、ああ!! あ、あああああぁぁぁーーーーーッ!!!」


「全くお前という奴は」
「………………」
「結局こうなるのか」
「………………」
「どうして回を重ねるごとに、俺の方に痣やら生傷やら増えていくんだろうな?」
「………………」
「何とか言え」
「………ッ…、」
「何だ?」
「…………離せ。頭を掴むな。髪を引くな! …ッ……触るな!!」
「ミロ」
「っ……」
「……」
「………………」
「もう一度風呂でも入るか?」
「………………」
「洗ってやるぞ」
「いらん!!」
「……」
「…………こちらを」
「ん?」
「こちらを向かなければ。入ってやってもいい」
「……」
「…………? ……! にやけるな!! クソッ、お前とはもう二度とやらん!! ……だ、からっ、触るなと言っているだろうが。こら、離せ、おまえはっ。いい加減に、く、人の話を、聞けーーーーー!!!」

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Open 2012.5.28 / Renewal 2015.11.22
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